2014.9.7 830 『雨風よ。若葉をよけてゆけ。』

09 08, 2014 | 日記2014

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・夕方。コーヒーを飲みながら読む。金子光晴「若葉のうた」。

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「さくらふぶき」

 夢でみた若葉は、さくらふぶきのなかに、
花嫁の振り袖すがたで立っていたが
 顔をのぞくと、やっと立ちあがる、まだあかん坊のままの顔だ。

 あたりはしずかで、もの哀しいことしの春のかたわれどき
 しあわせなんだねとたずねると、
娘らしくその顔を袖にかくしてはにかんだ。

 パパやママが若葉のしあわせを見送るさびしさの、
その日はいつ先のこと、
 その日にあえるすべもない祖父は、
うば車を押しながらそっと祈る。
 雨風よ。若葉をよけてゆけ。

 うば車がしずかにうごくと、若葉は、まぶたを閉じる。
 そのまぶたのうえに、一もとのうこんざくらが、
とめどもなしに散りかかる。


金子光晴「若葉のうた」p14.15より。

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